□投稿者/ ティル 新人(4回) [ID:TfRXBePs]
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親記事 引用 |
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全ての悩める者たちへ。
これは、最後の手段です。
これを使えば、どんなことでも成し遂げられる。
私が許可を出すことで、その力を振るうことが出来る。
そう…失うことを覚悟すれば。
視力を失うかもしれない。
足を失うかもしれない。
最悪は、自分という存在を失うかもしれない。
それでも構わないならば。
自分の全てを失う覚悟があるならば。
この力を与えましょう。
『Once Magic 〜一度限りの奇跡〜』を――― |
2007/12/18(Tue) 21:09:18 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ ティル 新人(5回)- [ID:TfRXBePs]
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Res1 引用 |
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12月。 世界のいたるところが、色を白く染める月。 春には桜が、夏にはスイカが、秋には紅葉が景色を彩るように、冬には雪が降る。 そして、一面を銀世界に変えてくれる。 なんて幻想的な雰囲気だろう。 この下には、茶色の地面が広がっているなんて嘘のようだと思う。 ちらちらと降ってくる雪が、また幻想的だ。 冬は、綺麗だ。 どんな悪にも逆らえない、神秘的な季節。 それならば。 それならば、なぜ。 なぜなんだ、冬。 なぜ、君が悪になったんだ…? |
2007/12/18(Tue) 21:24:01 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ ティル 新人(6回)- [ID:TfRXBePs]
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Res2 引用 |
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朝は、嫌いだ。 何故か? 簡単だ… 「怜人!いい加減起きなさぁい!」 ぐーすかと心地よい状態から出なければならないからだ。 やっかいだが、高校に通う身だからしょうがない。 やけに重い布団を跳ね除けて、俺は身を起こした。 そのまま伸び。 太陽がさんさんと照り輝いてはいるが、何せ冬である。寒い。 「れーいーとー!!」 うるさいなぁ。着替えくらいゆっくりやらせろよと思い、箪笥を開け、おなじみの黒装束―――世間が言うところの『制服』を素早く纏った。 それから机に置いてあった鞄をひょいと担ぎ、ドアを開けて階下へ急ぐ。 「あ、やっと起きてきたか…」 階段を降りきった俺を見て、半ば呆れながら言ったのはもちろんマイマザー。 「はい、今日の朝食…ってこら!」 そういって差し出されたトースト―――蜂蜜たっぷり塗られている―――をひったくるように取り、玄関へ走る。 「今日は帰り遅くなるからねー!何処かで適当に夕食調達してちょーだい!」 と微妙に呆れと焦りが混ざった声を後ろに、玄関のドアを開け、満面の光の中へ飛び出した。
いつもと変わらない、日常の朝。 なのに、何故。 何故なんだ、冬。 何故、俺の日常を変えてしまったんだ…? |
2007/12/20(Thu) 19:15:19 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ ティル 新人(8回)- [ID:TfRXBePs]
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Res3 引用 |
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…玄関のドアを開け、いつもの生垣の道を歩いている。 そうだ、五月蝿くならないうちに言っておこう。 俺の名前は工藤怜人。 15歳、高校生活真っ盛り。 その高校は、まぁけっこうレベルの高い白鷺高校。 名前の由来は、多分冬になるとシラサギが大量に現れるからだろうなと睨んでいる。 んで、その高校で俺の学力は平均。 というか、本当に平均。 というのは、平均より2点以上違う点を取ったことがない。 ある意味虚しい。 …うん、なんか本当に虚しくなってきた。 さて、そろそろだな…。
「せいっ!」 通称『生垣の道』――名の通り、左右に生垣が延びている道の終点で、俺は何も言わずに前転した。 通称『ドッジロール』。 素早く前転する技であるが、おそらく呼び名は絶対何処かのゲームのパクリだと睨んでいる。 素早いといっても、制服を汚したくないので普段はやらない。 それをあえてやる理由は、後ろにある。 俺はドッジロールから素早く立ち上がり、振り向く。 その目の前いっぱいに広がる、拳―――!? 「どりゃっ!」 殺気100%の容赦ない突き。 俺は黙って思いっきり体を後ろにそり、その拳を蹴り上げつつバック転した。 「痛ッ!!」 通称『マトリックス・シュート』―――もうちょっとマシな名前はなかったのかと思う名の技を受けた何者かの叫びが轟く。 「ったく…毎朝俺の制服を汚さないでくれよ」 俺は呆れ顔で、その『彼女』に言った。 「かよわい乙女を蹴り飛ばすなんてヒドイよ!」 『彼女』は言う。 「始まりはお前だろう!?」 俺も負けじと叫ぶ。 事実、この『彼女』は毎朝、生垣の陰に隠れて俺を驚かそうとしている。 そして、今朝もこの通りである。 「とにかくだ!俺はこれから学校に行くんだから邪魔すんな!」 そう行って『彼女』をおいて足早に去る。 そして残されそうになった『彼女』はというと…。 「ヒドい、最近怜人ひどいよ…!?」 そうつぶやき、俺の後を追いかけてくる。 「だったらその悪戯癖を止めてくれ!」 「それは却下!」 太陽さんさんの道を、二人の影が走っていく。
いつも通りの、登校。 そう、信じられないけど、これが俺の、日常の登校風景。 なのに、何故。 確かに、この日常はなくなっても良い、いやなくなってほしいと思っていた。 なのに、何故。 何故なんだ、冬。 何故、俺の全ての日常を、消えてほしくない日常まで、奪っていったんだ―――? |
2007/12/23(Sun) 13:23:06 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ ティル 新人(9回)- [ID:psOUJ46t]
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Res4 引用 |
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「…はぁ」 「………」 息を切らさんばかりに走る、俺と女性。 そうだ、静かなうちに紹介しておこう。
彼女の名前は新島理奈。 16歳、同じ白鷺高校で、俺より一つ先輩。 学内学力はかなり高く、たまに1桁に入るくらいだ。 あと、家はちょっと離れている。 そして――もう察しはついたかと思うが、俺の彼女だ。 そう、四月、入学式からの―――。
あの日、俺は結構浮かれていた。 早速友達ができた。大原辰也。 結構気さくなヤツで、どちらかといえばクールな俺にも気安く話しかけられた。 結構楽しい雰囲気だった、1年3組に、先輩は来た。
『あ、工藤君だ!』
なんていうか、とにかくはっちゃけた感じだった。 第一印象は微妙、いや普通。 同じ中学校を通ってきたので、知っていてもおかしくないが――その時は一瞬たじろいた。 そして、
『ねぇ、放課後に2年5組に来てくれないかな?』
いきなり、こう言われたのだからたまらない。 周りの人間の視線が『突き刺さる』。痛かった。
そして放課後、俺は2年5組に行った。 行ってしまった。 気楽な気持ちで行ってしまった。
誰もいない、とっくに皆下校しただろう教室に一人、先輩は、窓側の席について、夕日を眺めていた。 俺は悟った。 ああ、これはまさか、入ってきちゃいけなかったか、と。 そろりと、静かに教室を出ようとした。
『工藤君』
最悪のタイミングだ。 やっぱり、気づいてたのか。
『な、なんですか?先輩…』
出かけた足を再び教室の中に戻し、先輩の方を向く。 夕日に照らされてほんのり赤く染まった、完璧なシチュエーションの教室で、先輩は言った。
『あたし、工藤くんが好きだったの。付き合ってくれる?』
ああ、このときに思ったんだ。 もしかして、俺は凄いことに巻き込まれるかも、と。 だけど、何故。 何故なんだ、冬。 何故、ここまで凄いこと――凄惨なことをしてくれたんだ―――? |
2008/02/04(Mon) 09:56:55 [ 編集| 削除]
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