□投稿者/ あゆむ 一応書き込む人(33回) [ID:as1f11ce]
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親記事 引用 |
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「やめっ・・・ぁっ・・あぁんっ!!!助けてっ!!シンラン!!!!やめろっ・・!!」
雷鳴が鳴り響いた。
喘ぎながら少女は助けを求めた。 愛しい人の名前は虚空に消えていく。
ベットの上にはさらさとと金色の長い髪を垂らした少女が息を切らしてシーツを手繰り寄せている。 少女から離れた男はすぐに上着を羽織った。
「はぁっ・・・はぁっ・・・。」
息を切らして話す。
「この子は私の子供だ。お前の子じゃない!」 「可愛くない女だな。」
両者ともぴくりとも動かずに相手を睨みつける。
「お前への憎しみを十月十日歌ってやろう。腹の子はお前をほろぼしてくれるぞ?」 「ちっ・・・・。」 舌打ちをして紅い瞳を持った男はより少女を睨んだ。 「私の中にはシンランがいる。影が光を掌握するんだ・・・。くく。傑作だな。」 「黙れ!!!」 ダンッっと、壁を握りこぶしで叩く。
「知っているんだぞ、ランファ。私を殺さないのはシンランに・・・」 と言いかけたところで男は少女をまた押し倒した。
「そののど掻っ切るぞ?」 「ふっ・・・・。」 と、不適にも笑った少女の首にナイフが刺されることはなかった。 |
2007/10/19(Fri) 12:52:22 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ あゆむ そこそこ来る人(58回)- [ID:as1f11ce]
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Res11 引用 |
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だがしかし、レオンの尾行大作戦は意外な方向に幕を閉じた。 女は商店街のパン屋でフランスパンを6本買った。 そして細い路地裏に曲がった。 奥に長い、細く狭い道をぬけると階段があった。螺旋階段のような構造をしたそれを抜けた先にいた。
何人ものストリートチルドレン達が女の周りを取り囲んでさっきまでの死んだ目つきを一転させ、笑っていた。
「ミレイユおねえちゃん!!お帰り!!」
皆彼女をミレイユと呼んでいた。 『帰ってこないんだよ。』 ルイズの言葉がよぎった。 偶然の一致だろうか・・・。自分の探しているミレイユという女性が今ここにいるスリだなんて。 「ほら、パンだよ。みんなでちゃんとわけられる?」 さっきまでのきりっとした表情はなくなっていた。 無防備な笑顔。 ストリートチルドレンは本当に幼く、誰かに抱きかかえてもらっている子から、中学生くらい、つまりレオンとそう変わらない子までいた。 (自分と同じくらいの子までいるんだ・・・。) 本当に胸が痛かった。 「じゃぁ私はまた仕事だから。」 そう振り返った彼女に声をかけた少女がいた。 たぶんこの中で一番年上の少女。レオンと変わらない背丈。フランスパンをすべてうけとっているところから、きっとこの中でリーダー的、姉的な存在なんだろう。 「ミレイユ・・・。その・・・。ごめ・・」 全て言い終わる前にミレイユが返した。 「いいのよ。」 最後に笑った彼女の笑顔の裏を知っているのは多分このときはその少女だけだった。 「ミレイユばいばーぃ!!」 「また遊びにこいよ!!」 「はぃはい。すぐ来るから。」 といって、階段を下りて来た。
目があう。
「あんた・・・、さっきの・・・。」 「すみません、掏られた事に気付いてついてきました・・・。」 「そ。返すわ。」 正直、素直に受け取れそうになかった。 「ありがとぅ、ございます・・・。」 「何くらい顔してんのよ?戻ってきたんだから喜びなさいよ。あんなのただのボランティアなんだから。あんたは気にしなくていいの。」 「でも・・、私利私欲のために使わないなんて、感動しましたよ。その・・・違法かもしれませんけど・・・。」 うつむいたまま、そう言った。 「ありがと。じゃ、これから仕事だから。今度こそついてくんじゃないわよ?」 なんだかこの人が本当に自分の探しているミレイユという人物なのかはわからなかったが、もしそうなら本当につれもどしていいのかわからなかった。 「あの・・・。その・・・。名前・・・。教えてください。」 少しびっくりした顔をしたが彼女は言った。 「ミレイユよ。ミレイユ・フォッセー。あんたは?」 「レオンです。レオン・フェンリート・・・。」 「そ、じゃあね。」 ミレイユはすぐに踵を返して行ってしまった。
「やっぱり・・・偶然じゃなかったんだ・・・・。」 取り残された小さな階段の下で、レオンはそう呟いた。
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2007/11/04(Sun) 11:37:44 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ あゆむ そこそこ来る人(59回)- [ID:as1f11ce]
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Res12 引用 |
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とにかく、一度わかれてしまったが、またあの溜まり場にいけば彼女に会えるわけだし、とにかく警察かなんかに行けば本当に彼女が本当にミレイユなのかがわかるだろう・・・ということで、レオンは町の警察署にいった。 (あれだけ前科がありそうなんだから、もちろん捕まったことくらいあるはず!!!) と思っていたのだが、まったくなかった。そしてあの野菜売り場のおじさんの言葉をおもいだす。 『天才スリ』 「あぁうぅ・・〜。」 とわけのわからん声でうなっていると、こちらに気付く様子もなくミレイユが入って来た。 とっさに隠れるレオン。 (なんで、こんなところに・・・?) 気にならないわけがない。
レオンの尾行大作戦2がはじまった。
ミレイユはエレベーターに乗るとどうやら5階で下りたようだった。すぐにとなりのエレベーターに乗って5階に向かったレオン。ちょうどエレベーターから降りると、一足先についたミレイユはまっすぐな廊下を歩いているところで、ちょうど突き当たりの部屋に入っていった。 上から順にスペイン語、中国語、英語、の順番で「所長室」と書いてある。 レオンがわかったのは下のふたつ。 今まで紹介していなかったが、シンランやゆきめ、ルイズと話しているときの大半は中国語である。なにせ、世界の中心が中国だから、常識的に考えてわかるだろう。 「こんな時のためにルイズさんに渡された増幅器―!!じゃじゃーん。これで扉の中の声までばっちり☆盗聴さ。」 さっそく小型増幅器をとりつける。 はっきりいって、スペイン語で会話されていたら終りだが。運のいい事に中国語で会話をしていた。 (二人ともスペイン人なのに・・・どうしてだ・・・?) と、一瞬ひっかかったが、その理由はすぐにわかった。 『ミレイユ、また派手に観光客を狙ってスリをしているそうじゃないか。』 『ふん。ほっといてよ。』 『こうしてお前が捕まらずに何度もスリをしているのが誰のおかげかわかっているのか?』 『あの子たちさえ人質にとられてなければあんたなんてっ!!』 『私がいつあんなクズどもを人質にとったのかな?』 『くっ・・・。あの子達を保健所で皆殺しにするっていったのは誰よ!?』 『お前もバカな女だな。あんなクズのために自分の体を私に売ってまで。』 『黙ってよ!!』 ドサッ、『きゃっ!』 『さぁ、取引の対価だ。』 『あっ、あんっ、やめてっ!!・・・くんっ・・ぁ・・・。』
レオンはそこまでで増幅器をはずした。 「そんな・・・。そんな・・・・。」 ミレイユがスリをするわけ。捕まらないわけ。帰ってこれなかったわけ。
すべてはあの子たちの笑顔を守るためだった。
三時間もして、ミレイユが出て来た。 体育座りで扉の前にうつむいているレオン。 「あんたっ。こんなとこで何してんのよ!?」 ぐすっ、と鼻をすすりながら顔をあげた。
涙。
「ちょっ、何泣いてんのよ!?ほらっ、行くわよ!!!」 「ごめんなさぃっ・・・・。」 そう小さく言ったレオンに
「なんであんたが泣くのよ。」 誰にも聞こえない声で言った。
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2007/11/04(Sun) 12:45:20 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ あゆむ かなり来る人(60回)- [ID:as1f11ce]
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Res13 引用 |
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「ほら。コレ飲んで元気付けなさいよ。」 ミレイユはぽいっと缶ジュースを投げた。 「・・・。ありがとうございます・・・。」 「レオンとかいったっけ?なんなのよ、人の後つけてきて。」 「すみません、あそこでたまたま見つけたものだったから・・・。でも、やっと探し人は見つかったんです。」 「ふぅん。よかったじゃない。」 つまらなそうにミレイユはいった。 「あなたです。ミレイユ・フォッセーさん。中国警察、特務1課より参りました。レオン・フェンリートです。」 手帳を開きレオンは言った。 「ふぅん。ってええええええええ!!??あんたみたいのが特務1課あああ!?」 「はぃ。はぐれてしまいましたがシンランさんとゆきめさんもどこかにいます。」 「そういうことだったのね・・・。納得。でも帰れないわね。当分は。あんたは聞いてたんでしょ?・・・。そういう、こ・と。」 「どうしてそこまでするんですか!!自分を犠牲にまでして!!こんなの悲しいだけですよ・・・!!」 「・・・・・。」
少し黙ってから口をひらいたミレイユはいきなり自分の生い立ちを話し始めた。 「・・・そうね、私の母親も腕のいい泥棒だったのよ。泥棒をして生計をたててたの。父親は知らないわ。小さな家だったけど幸せだった。二人で暮らして。私も幼い頃からスリの技術を徹底して教え込まれたわ。・・・お母さんが稼いで来てくれたおかげで私は学校にも行かせてもらってた。私もお母さんもつかまったことなんてなかったし、物を取ることが悪い事なんて私、知らなかったの。でもね、いつだったかクラスメイトにお前の母親は泥棒だ!っていじめられたわ。そのとき初めて知った。自分たちがしてきたことが悪かったって。まるで自分のすべてを否定されたようで怖かったわ・・・。そしてその次の日お母さんは初めて現行犯で捕まった。私がいじめられた原因が自分にあることで思いつめてたのかもしれない・・・。それで常習犯ってことがわかって、面会をした次の日、・・・・・・公開処刑にされたわ・・・・・・・。」 「そんな・・・・っ!」 「面会をしたときに私は母から一枚の紙を受け取ったの。父親の所在と、特務1課の存在。私もいつ罪がばれるのか怖くて、すぐに逃げるように中国に飛んだわ。そこでランファに会った。あの男はすぐに私を特務1課に入れてくれた。それで私はあの男のために忠誠を誓って今にいたっているの。・・・。でもね、私みたいみたいにこんな恵まれた境遇にあえる子なんてあのストリートチルドレンたちの中にはいないのよ。私には母親がいて、こうやって今だってちゃんと職について生きてる。でもあの子たちには一番よりそいたい時期に最初から母親に捨てられているのよ?毎日飢えと闘って・・私を待ってる。おいていけるわけがないじゃない。」 「・・・・・・・。」 黙るしかなかった。答えるにはあまりにも自分が薄っぺらい人間で。 ガサッ。 !!! 「つぶすしかねぇな。」 「つぶすしかないのであります。」 レオンとミレイユが座っている公園のベンチのうしろの茂みからでてきた。 「あっ!?あんた達!!どこからはえてくるのよ!?」 「ひさしぶりだなミレイユ。」 「お久しぶりであります。ミレイユ殿。」 シンランとゆきめがそれぞれ言った。 「聞いてたんですか・・・?」 「もちろん!泣けるじゃねぇか!!!ミレイユ!!!よっしゃ、俺らも参加するぜぃ!!」「参加って何によ・・・・。」
「なんかややこしくなってきましたよ・・・」 「この二人が加わればいつものことよ。」
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2007/11/04(Sun) 13:36:16 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ あゆむ かなり来る人(64回)- [ID:as1f11ce]
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Res14 引用 |
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「俺らだってただスリから逃げ回ってたんじゃねーんだぜ。」 「そうであります。ミレイユを脅しているその男の正体をあばきまくってきたのであります。」 突然切り出した彼らに制止をいれたのはミレイユだった。 「ちょっ、なんでそんなことまで知ってんのよ!?」 「だいたいのことは本当はルイズから聞いてきたんだ。」 「あの男・・・くっ、どこまで耳が大きいのよ・・・。」 「落ち着くのであります。ミレイユ。とにかく我々が現地で調べてきた情報とルイズから調べてきた情報をあわせるとこういう結論にいたるのであります。」 「あの男、麻薬の密売にも一枚かんでるぜ?」 「なんですって・・?」 「それなら逮捕できますよ!そうすればミレイユさんも帰ってこれるじゃないですか!」 「そうであります。ルイズも早く帰ってきてほしいんだと思うのであります。」 「・・・。わかった。これ以上あの子達を私に依存させるのは可愛そうだわ。ルイズのためじゃないのよ?」 ふっ、と笑ってシンランが立ち上がった。 「これで決まりだな!」 「策戦は・・・」
策戦は麻薬密売グループを現行犯逮捕してミレイユにつけこんで脅している所長、アガーテも共犯だと自供させるという単純明快なものだった。
(((((なんで僕がおとりぃ〜・・・・!!!?(泣))))) 夜の誰もいない商店街の中を一人で歩かされている。 (((((僕が死んだら特務1課は大きな打撃ですよ!?全部僕の脳にしか記録されてないものがいっぱいあるんですよ!!!?))))) そこへ案の定密売グループの男がやってくる。 「よう、坊主。うまいもんがあるんだが食ってかないか?」 「けっ、結構です。」 レオンが断ると男は袖口から何かを取り出した。 「!?」 「そうかい!!!」 小さな注射器、思いっきりさされそうになったが間一髪のところでレオンはよける。そしてエア・ガン(麻酔銃にしたもの)を撃つ。 「くっ!」 といって転げ落ちた男は顔をゆがめてレオンを見た。 「おめぇ何者だ?」 「警察だ。」 そう言ったのはシンランだった。すぐに駆けつけて来てくれたのだが今回はレオンの大活躍で出番はなかった。 すらりっ、と何処からともなくゆきめは日本刀を取り出す。 「殺されたくなかったら吐くのであります。他のメンバーはどこでありますか?」 「言ったら少しは刑を軽くしてあげるゎよん?さぁ。」 ブロンドの髪を夜空に揺らしてミレイユは笑った。 「本当に指の一本ずつ落としていくのでありますよ?」 「ひっ・・!!」 犯人はあっさりと仲間の居場所を売り、警察署まで連行された。そしてその間にアガーテと協力関係にあったことも言ったのだった。 レオンとシンラン、ゆきめは犯人グループのリーダーを連れて所長室へ向かう。
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2007/11/10(Sat) 12:36:34 [ 編集| 削除]
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□投稿者/ あゆむ かなり来る人(65回)- [ID:as1f11ce]
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Res15 引用 |
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「くそっ!!なぜだ!!なぜばれたんだ!?それに早くアレも処分しなければ・・!!」 「アレっていうのはコレのことかしらん?」 慌てふためくアガーテの後ろに、机に腰をかけて白い粉のはいった袋を揺らしている妖艶な女性がいた。 「貴様・・・・!!!どうやってこの部屋に・・・!?」 「知ってた?私の本業はスリじゃなくて泥棒。奇術師、つまりトリック・スターなのよん?」 「うわあああああああ!!!!!!」 花瓶を投げてきたが錯乱した状態では狙いなど定まるわけもなく、ミレイユは動じる事なく座っていたままであった。 「本当に、私がバカだったわ。」 ガチャリと音を立ててはいって来たのはレオン達三人だった。 四人揃ったところで言う 「中国警察、特務1課(です・だ・であります・よん)。(貴方を・お前を・貴様を・あんたを)逮捕(します・するぜ・するのであります・するわ)。」
揃っていなかった。
アガーテはすぐに警察につかまり、本人も麻薬の常習犯であったことが明かされた。 事件はあっけない幕引きだった。
ミレイユは別れを告げるためにあの場所に向かっていた。 だまってレオン達三人もついていく。 「ミレイユ!!」 「ミレイユおかえり!!!」 「今日は皆にお話があって来たの。」 「・・・。」 最年長の女の子だけが少し悟ったように口をつむいだ。 「私はもぅ仕事で中国に行かなくちゃならなくなったの。だからね・・」 「会えないの?」 「もぅ会えないの?」 「ミレイユお姉ちゃん帰ってこないの?」 最後まで言い終わるうちに小さな女の子は泣き出してしまった。
「会えなくねぇ!ミレイユならまたたまに帰ってくるさ。」
「シンラン・・・。」 シンランが突然言った。ミレイユは振り返ってびっくりしていたが、 「そうね・・・。また帰ってくるから。」 「約束だよ!」 「約束して!」 「いいわ。しばらく帰って来れなくなるから、今日はめいいっぱい皆で遊ぶわよん!!」 無防備な笑顔。それが彼女の魅力だった。
子供たちを寝かしつけたあと、シンランとミレイユは二人で公園に来ていた。 「さすがにあそこじゃタバコはすえないわね。」 「しっかりお母さんみたいなこと言ってらぁ。」 「ふん。花嫁修業も兼ねてたつもりだもの。」 「お前の実力ならあんなおっさんに従わなくても、スリじゃなくてもっと大胆に泥棒でもなんでもやってできただろ?そうしなかったのはなんでだ?」 「言ってんでしょ。あの子らを保健所に引き渡されたくなかったの。」 「本当はお前の母さんもお前と同じように体を売って、スリしてたのかもな。」 「ふっ・・・お母さんと同じだったの、無意識的に覚えていたのかもね・・・。どっちだっていいけど。」 「そうだな。」 二人は黙っていた。 「あの子、レオンとかいったっけ?いい子ね。いくつ?」 「さぁ、15,6だったかな。いい奴だぜい。」 近付いてきた人影。 「すみません。お邪魔でしたか・・?」 近付いてきた人影はストリートチルドレンの中で最年長の女の子だった。 「クロサ―ヌ!」 「いいや。俺は先に戻るぜ?ミレイユ。」 「ありがと。」 目配せをして、シンランは夜の闇に溶け込んでいった。 「本当に行ってしまうんですか?」 クロサ―ヌと呼ばれた少女は震える声でそう言った。 「ごめんね。クロサ―ヌ・・・。」 「気をつけて行ってください・・・。また帰って来て。ミレイユ・・・。」 「えぇ、もちろんよ。」 二人は抱きしめあった。
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2007/11/10(Sat) 12:38:40 [ 編集| 削除]
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